例会の記録 2024年6月 「私が出会ったスイス人たち」

6月28日(金)の例会は、「My Favorite ◯◯◯」の第2弾として、昨年新たに複雑研の仲間に入ってこられたK. Ishiharaさんにお話いただいた。タイトルは「私が出会ったスイス人たち」。出席者はリアル10名、リモート2名、計12名。まずは自己紹介。

“私は根っからの技術屋で、溶接設備を製造する会社に長く勤めていたが、たまたま縁があってスイスの会社にヘッド・ハンティングされて転職。ドイツ語圏にある日本法人のたった一人の社員として、技術から営業までの分野を任されることに。この会社は総勢200人程度の小企業ながら、ある応用分野では世界シェアの80%を占める優良企業。日本のものづくりとは異なる意味で目からうろこ状態。”

”この会社の仕事を通してスイス人と関わり合う中で、日本人と比べて優れた面、受け入れられない面、そしてハテナ?と思う面をひたすら観察して、文化や国民の多様性という意味で多くを認めるようになった。日本にいると米国人やアジア人との接触は多いものの、欧州ではもっぱらドイツ人が主という状況の中で、一味違ったスイスの人たちを紹介したい。”

・・・自己紹介のあと、出席者に「スイスと聞いて何を思い出すか ?」と問いかけ。答: アルプス、観光、チョコレート、チーズ、アルプスの少女ハイジ、時計、永世中立国、金融、マネーロンダリング、直接民主制・・・。まあ想定の範囲内の答だったと思う。そこで、私たちが知らないスイスとスイス人を例をあげて説明していただいた。以下、メモをもとに要約してみる。

▶︎ 連邦国家で26の州があり、2000以上の市町村がある。人口は8,500千人で、そのうち25%が外国人。公用語はドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4つだが、英語は誰でも話す。

▶︎ 大学進学率は低く、むしろ職業訓練校が多いが、日本とは教育のポリシーがまったく違う。スイス人は頭がいい。人と同じことをしない。だから化学、製薬、精密機械 (時計など)の分野で付加価値の高い製品を世界に販売している。そして金融、サービス業などを含め、ブランド構築が得意。競争力は世界 2位、男性の寿命は世界一。

▶︎ 山ばかりで平地が少なく農業には不向き。貧しい国で、かつての主産業は傭兵を送り出すことだった。交通の要衝なので狙われる。だからしっかり軍備している。永世中立国とは、戦争の際、どちらかに加担しないということ。核シェルターの数は人口の114%。2週間生き延びられる。

▶︎ チョコレートをひとり当たり9kgも消費(日本は2kg)。名物のチーズフォンデュはバラエティに富んでいる。

▶︎ すばらしい山岳景観にのどかな田園風景はまさにハイジの世界。しかし、それは多額の補助金によって維持されている。景観保護のため、農業に多額の補助金が支出されているが、そうした税負担をほとんどの国民は納得している。

▶︎ 自転車文化が発達している。自転車道が完備しており、自動車道とは完全に分離。家族でサイクリングするのはごく普通。自転車道の維持にはお金がかかるが、薬漬けで医療費増加で苦しむ日本とどちらがいいか ?

▶︎ しかし、良い面ばかりではない。第二次大戦中、逃れてきたユダヤ人を追い返した歴史がある。また、女性にはあまりやさしくない。スイス全土で女性の参政権が実現したのはなんと1991年のこと。

・・・

以上、さまざまな観点からスイスとスイス人について語っていただいた。私はお話を興味深く伺いながら、スイスと日本、スイス人と日本人を比較し、その違いはどこから来るのだろうかと考えてしまった。教育だろうか ? 歴史だろうか ? それとも政治 ??

2024.9.15 M. Hayashi

※ 写真は、ルツェルンにある「瀕死のライオン像」。フランス革命時に傭兵として最後までルイ16世を守った記念碑。K. Ishiharaさんより提供。

1か月前