例会の記録 2021年2月 〜『食っていける、儲かる林業』 を立ち上げる〜

2月19日金曜日、スペーシア会議室をお借りして例会を開催。新型コロナ感染症の緊急事態宣言で愛知県、岐阜県では飲食店の夜間営業短縮が続いており、今回もリアルとリモートの併催とした。出席者は16名(うちリモート7名)。

今回は、NPO法人もりずむ理事長 藤﨑 昇さんをお迎えし、「『食っていける、儲かる林業』を立ち上げる」をテーマに、林業を取り巻く現状やNPOの趣旨、活動などについてお話を伺った。

『食っていける、儲かる林業』を立ち上げる

1. 林業から見た中山間地域、暮らしの現状と課題
2. もりずむの使命
3. もりずむの戦略
4. 事業構成
5. 主な活動実績
6. 今後の課題
7. 今後の展望
おまけ 鹿追犬プロジェクト

一般にNPOなどの非営利法人は、福祉や貧困、環境といった社会問題の解決を目指し、寄付金や行政からの支援により、あるいは自治体の指定管理により事業を運営しているイメージが強い。ところが、NPO法人もりずむ・藤﨑理事長の話を伺うと、そんなイメージとは程遠いことがわかり、びっくりする。

木材価格の下落によって、林業が儲からなくなり、森林が荒れ、放置林がどんどん増えている。そうした中、NPO法人もりずむ(以下「もりずむ」と略す)は、①食っていける、儲かる林業を確立して、“ 森林と中山間地域を元気に” する。 ②暮らしと森を繫げて、“心身ともに健康な暮らし” 作りに貢献する。を使命に掲げ、2012年12月に設立。創設者で理事長の藤﨑さんは、なんと横浜出身。奥様の地元である三重県で林業を志し、森林組合での勤務経験を経てNPOを立ち上げた。

もりずむの定款第3条には「この法人は、著しく産業が衰退・低迷する中山間地域において、付加価値を高めた木材の 製造・販売を基軸とし、林業体験イベント、バイオマス利用、耐震診断・リフォーム等を組み合わせた複合的事業を行って持続可能な林業を目指すとともに、安全な無垢の木材を普及させ、もって森林の保全、中山間地域の産業振興ならびに安全、安心、快適な暮らしに寄与することを目的とする」とある。実に明解だ。

そして、第3条の目的を達成するため、(営利事業ではなく)特定非営利活動として、「(1)付加価値を高めた天然乾燥材による素材生産、製材、販売事業」「(2)森林施業、製材、木工等の参加体験イベント事業」「(3)耐震診断・補修、バリアフリー修繕等のリフォーム事業」などが掲げられているのだ。自ら素材生産・製材・販売事業や体験イベント、リフォーム事業などを運営することにより、新しい林業のビジネスモデルを作っていくことだ。

もりずむ の理念や活動内容については、ホームページに詳しく掲載されているので参照していただくとして、ここでは勉強になったお話や意見交換の内容をかいつまんで紹介します。

  • 「新月伐採」は、月齢が下弦の月から新月にかけての時期に伐採する伐採法。「葉枯らし乾燥」は、伐採した木をその場で玉切りして搬出しないで、半年以上の間、葉をつけたままその場で自然乾燥させる方法。もりずむでは、敢えてこうした手間のかかる手法を採ることで木材の付加価値を高めている。これが「もりずむの木」である。
  • 一方、スギやヒノキは、柱や梁、板材などに加工される製材用としては根元から6mくらいしか使えない。それより上の部分や枝葉は利用価値がない。これらを少しでも価値あるものとして利用するため、薪ストーブ用の「もりずむのマキ」事業を展開。薪ストーブのユーザーが薪の調達に苦労しているところに目をつけた事業だ。原木市場に出荷する材木の規格は最低3mなので、軽トラックでは運べないが、薪のサイズなら零細な山林所有者でも出荷することができる。これで得られる地域通貨券で地元の小売店で買い物ができるので、儲からない林業に精を出すおじいちゃんの評価が少し上がるのだそうだ。
  • また、もりずむは、子供たちが自分の責任で冒険できる自然の中の遊び場である「プレイパーク」の整備に力を入れている。令和元年6月、三重県津市美里町に美里水源の森がオープン。NPO法人もりずむは、一般社団法人セブン-イレブン記念財団やTOTO株式会社などとともに、美里水源森を管理する長野川流域環境保全協議会の活動に協力している。
  • 最後に「鹿追犬」の話を伺った。獣害が大きな問題となって久しいが、畑や田んぼだけでなく山林でも大きな被害がある。せっかく植えた苗木を食べてしまったり、樹皮を齧ったり。そこで、犬を仕込んで鹿を追い払う取組みを始めたそうだ。小型のアクションカメラを犬に取り付けて、鹿を追う様子を撮影したビデオを見せていただいたが、これは衝撃の映像だった。

以上、遅くなりましたがご報告でした。藤﨑さん、ありがとうございました。

2021.4.4 M. Hayashi

※冒頭の写真は、NPO法人もりずむのホームページより拝借させていただきました。

3年前