8月の例会の後半のプレゼンは、今年度の例会テーマ「カスケード」を理解していただこうと思い、類似の現象をたくさん挙げてみました。当日は、YouTubeの映像などを見ながら解説したのですが、あまり時間がなかったので、以下、少し詳しめに説明します。
まず、カスケード cascade は、例えば「赤目四十八滝」のように多数連なる滝の意。建築用語になっているほか、エネルギーや林業の分野では「カスケード利用」という言葉がよく使われる。エネルギーのカスケード利用とは、まず、高密度のエネルギーを使って何か仕事をした後、廃棄された密度の下がったエネルギーを別の仕事に用い、そこで廃棄されてさらに密度の下がったエネルギーをまた別の仕事に用いる・・・というように、効率よくエネルギーを使い回しすること。
スノーボール snowball は雪玉のことだが、英語で snowball effect というと「雪だるま式」にどんどん大きくなっていくこと。
続いてドミノ効果 (domino effect) とは、革命、動乱などがドミノ倒しのように連鎖的に起こっていくこと。1980年代終わりの「東欧の民主化」、2010~12年の「アラブの春」など。
シーシュポス Sisyphus は、ギリシャ神話に登場する人物の名前。カミュの小説『シーシュポスの神話』でも有名。シーシュポスは、巨大な岩を山の頂まで苦労して押し上げていくが、あと一息というところで岩はガラガラッと転げ落ちてしまう。シーシュポスは、また山の麓から岩を押し上げていくが、何度上げても転げ落ちてしまうという労苦が報われない話。
リップル ripple とは「波紋」のこと。一点を中心にして波が同心円を描きながらきれいに広がっていく。ドップラー効果 (doppler effect) は、パトカーや救急車のサイレン、新幹線が間近を通過するときの音。近づくと音程が高くなり、離れて行くと低くなる。
バタフライ効果 (butterfly effect) は、複雑系の世界ではつとに有名。アマゾンで蝶が羽ばたくと、巡り巡ってニューヨーク(北京?)で暴風になるという話。日本の「風が吹くと桶屋が儲かる」ということわざが近い。
コブラ効果 (cobra effect) は、なかなか面白い話がある。昔、イギリス統治時代のインドのデリーで猛毒のコブラが増えて困った。そこで時の植民政府は、コブラを捕まえてきた人に謝礼を出すことにした。すると、次々にコブラを捕まえて謝礼をもらう人が現れ、コブラは順調に減っていった。ところが、そのうちコブラを飼育して繁殖させ、次々に持ち込む者が現れた。それに気づいた植民政府は、直ちにこの制度を廃止した。そうしたらコブラを飼育していた者は飼っていたコブラを街に放ったので、そこらじゅうコブラだらけになってしまった、というオチ。
ストライサンド効果 (Streisand effect) は、歌手・女優のバーブラ・ストライサンドが自宅である海沿いの豪邸を撮影した航空写真をインターネット上に掲載されたことに怒り、大騒ぎをした。その結果、アメリカ中の人がストライサンドの豪邸の存在を知ることになったという皮肉な話。
レゾナンス resonnance とは「同期」のことである。同じ目盛りに合わせた多数のメトロノームを手で次々に動かしていくと、はじめはバラバラに針が振れるが、時間が経つにつれて針の振動のタイミングがきれいに揃っていく現象。蛍の光、セミの鳴き声など昆虫の世界でもみられる。
ルーブ・ゴールドバーグ Rube Goldberg は、実在したアメリカの漫画家、発明家で、「ルーブ・ゴールドバーグ・マシン」を考案した。口を拭う、ボタンを押すといったちょっとした動作を、できるだけ大掛かりな連続する仕掛けで実現する馬鹿馬鹿しいマシン。ネット上にたくさん動画がアップされているので、ぜひ覗いてみていただきたい。
最後の鴨 長明は、鎌倉時代の随筆家でもともとは禰宜(神職)。有名な『方丈記』の冒頭、「行く河の流れは絶えずして しかももとの水にあらず。淀みに浮かぶうたかたは かつ消え かつ結びて 久くとどまりたるためしなし」は、天変地異が非常に多かった時代を背景に書かれた名文だと思う。そうした状況は、近年の日本にも通じるところがあるかもしれない。
冒頭の写真は、名張の赤目四十八滝です。
2020.10.7 M. Hayashi