雑草のアナロジー

このホームページでは、メンバーの皆さんにも自由に投稿してもらおうと思っていますが、できれば複雑系に関連する話題がたくさんあるといいなと思っています。そこで、手始めに「雑草」のお話を提供します。

イギリスの生態学者、J. F. グライムさんによると、植物はその「成功要因」で、3つに分類できるのだそうです。

1つめは「競合型(Competitive)」で、他の植物との競争に打ち勝っていこうとするタイプ。植物界では強い植物なのですが、必ずしも生存競争に勝てるかというと、そうでもないそうです。

2つめは「ストレス耐性型(Stress tolerance)」で、乾燥や日照不足、低温などのストレスに強いタイプ。サボテンはその代表です。

3つめは「撹乱依存型(Ruderal)」で、いつ起きるかわからない環境の撹乱に素早く適応していくタイプ。いわゆる「雑草」がこのタイプ。「競合型」の植物には太刀打ちできず、「ストレス耐性型」のように特にストレスに強いわけでもない。ただ、人間が気まぐれに掘り起こしたり、ひっくり返したり、耕したり、踏んづけたりするような場所にすばやく進出して、うまく適応してしまうタイプです。

さて、こういう話は、すぐ経済の世界に当てはめてみたくなってしまいます。

市場が多数の「競合型」企業の商品・サービスで飽和してしまったとき、「ストレス耐性型」の企業は、既存の市場に踏ん切りをつけ、思い切って新しい市場に出て行く。そこでは、よくわからない規制や商慣習、理解不能な労働者や変な嗜好の消費者などにぶつかって、とにかく大変。それでも、そこをがんばって切り抜けると、他の企業に先駆けてフロンティアを開拓し、大きなシェアを獲得することができたりします。(例えば、インド市場でのスズキ自動車の成功は、こうした例なのかもしれません。)

一方、「撹乱依存型」は、こうした巷の競争原理や新市場開拓などどこ吹く風。我が道を行くタイプ。環境の撹乱が起こるのをじっと待っています。たとえば社会の大きな変化(無茶な規制強化、インフレ、大災害、新しい市場の誕生・消滅など)が起こると、どこからともなく現れて、一時、市場を席巻してしまったりします。あまり例としては良くないかもしれませんが、戦後の動乱期、闇市などを舞台にこうした「撹乱依存型」のビジネスが繁栄していたように思います。

でも、「撹乱依存型」の覇権(?)は長続きしません。なぜなら、環境変化が一段落して世の中が安定すると「競合型」が幅を利かすようになり、「撹乱依存型」は駆逐されてしまうからです。

今、自動車業界では、新しいプレーヤーによる自動運転や配車サービスが急成長して、激変が起こりそうな気配。また、様々な分野でシェアリングビジネスが急ピッチで進展し、ほとんど無料の世界がどんどん拡がり、既存の大企業・ビジネスを脅かしています。朝鮮半島では政治情勢がめまぐるしいスピードで動いていて、近い将来、かつての東欧のようなことが起こらないとも限りません。

・・・そろそろ「撹乱依存型(雑草型)」企業やビジネスの出番?

最後に雑草の話に戻りますが、畑などで「雑草を完全になくす方法」がひとつだけあるのだそうです。なんだかわかりますか?

答えは「雑草をとらないこと」。つまり、引っこ抜いたり除草剤を蒔いたりせず、放置することなのだそうです。そうすると、そのうち「競合型」の植物が侵入してきて、日本の気候風土の場合だと、「裸地」→「草原」→「低木林」→「陽木林」→「混交林」という順に「遷移」が起こり、最終的に「陰樹林」という常緑広葉樹中心の林になっていく。雑草が繁栄するのは、そうしたプロセスのごく最初のうちだけです。

こうなるともはや畑の話ではないですね。裏を返せば、畑が畑である以上、雑草を完全に駆逐することは不可能だということなのかもしれません。むしろ、M. Asadaさんがよく仰るように、「雑草と人間が共存していく道」を探ることが必要なのではないでしょうか。

M. Hayashi 2018.05.12

※『雑草はなぜそこに生えているのか』(稲垣栄洋著、ちくまプリマー新書 2018)を参考にしました。

※写真は、以前何かを植えていた鉢をほったらかしにしておいたら勝手に生えてきたカタバミです。結構気に入っています。これも雑草です。Wikipediaによると、カタバミは「繁殖が早く、しかも根が深いので駆除に困る雑草」なのだとか。ちなみに、クローバーとは全く別の植物らしいです。知らなかった。

2年前